人はだれでも、遺言をする・しない、遺言の変更や撤回をする・しない、を自由に決めることができます(遺言自由の原則)。
人は遺言の自由を放棄することはできませんので、本人以外の誰かと「私は遺言をしない」とか「この先遺言を撤回したり変更はしない」というような取り決めをすることはできません。
また、人は自分の財産を自由に処分することができ、遺言は、生前自由に処分できた自分の財産を死後に処分すること、ですから、遺言でどのように処分(配分)するかも、原則として自由です。
ただ、なんでも遺言できるわけではなく、遺言できる事項は民法に定められているほか、次のような制限があります。
遺言をするには、遺言をするときに、遺言能力を有していなければなりません。遺言能力とは、自分がする遺言が法的にどのような効果を生じるのかを理解する能力のことをいいます。
遺留分とは、一定の相続人が最低限取得することのできる相続分のことであり法律で定められています。遺言でも、この遺留分を侵害する事はできません。ただし、遺留分を侵害する内容の遺言であっても、法的要件を備えていれば遺言自体は有効です。
この場合は、遺留分をもつ相続人が遺留分減殺請求という意思表示をすることで、その相続分を取り戻すことになります。遺留分減殺請求も個人の意思表示ですから、請求するかしないかはその方の意思によります。
つまり、遺言をもってしても相続人の遺留分までを奪うことはできません。ただ、遺留分減殺請求は、その請求権を行使すると意思表示したときに効力が生じ、その実現の行方は、遺留分請求権をもつ相続人の意思にかかってくるため、遺留分を侵害する遺言であっても無効にはならず有効だということです。
すべての財産を一人の相続人に相続させたり、相続人以外の人に遺贈する、というような場合は、この遺留分についてよく考えておく必要があります。
遺言は、2人以上の人が同じ遺言書ですることができません。例えば、夫婦が協力して一つの遺言書を作成する、といったことはできません。それぞれで遺言書を作成する必要があります。
これは、遺言自由の原則によります。遺言をすること、変更すること、撤回することは、自分の意思で自由に行わなければなりませんので、2人以上の人で作成してしまうと、その自由が制約されてしまうからです。
公序良俗に反する遺言は無効となります。公序良俗に反して無効、とは、社会の秩序や善良な風俗を守るという観点から、公の秩序に反して社会的妥当性を著しく欠く行為はその法的効力が否定されることです。