(8)相続したくないときは?(限定承認、相続放棄)

被相続人の財産は、相続開始により、相続人に包括的に承継(包括承継)されます。

 

 一方で、相続財産を承継するにあたって、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という制度があり、「相続をする」・「限定的に相続する」・「相続しない」を選択することができます。これを「相続選択の自由」といいます。

 

 その選択をするため、相続が開始したあと、相続財産の状況を調査してリスト(財産目録)を作成し、相続するのか、限定的にするのか、しないのか、を考える時間が与えられています。これを「熟慮期間」といいます。

 

 熟慮期間は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから」3カ月以内です。

 

 この熟慮期間を過ぎた場合には、自動的に「単純承認」したことになります。
 また、相続財産の一部でも使ってしまった場合も、自動的に「単純承認」したことになりますので、注意が必要です。

単純承認とは

通常の相続のことです。相続人は、例外を除いて被相続人の一切の権利義務を包括的に承継します。(プラスの財産も、マイナスの財産もすべて引き継ぎます。)

 

 単純承認をするための手続は特に必要ありませんが、次の場合は、単純承認したとみなされます。

 

 ・3カ月の熟慮期間が経過したとき
 ・相続財産の全部又は一部を処分したとき(使った場合など)
 ・背信的行為があったとき(限定承認や相続放棄をしたのに、相続財産を隠匿したり、私的に流用した場合)

限定承認とは

相続した財産の範囲内で、被相続人の債務を弁済し、余りがあれば相続できるという制度です。
 通常の相続のようにプラスの財産とマイナスの財産を承継しますが、債務(マイナス)については、相続財産(プラス)の限度で責任を負うということです。

 

 ただし、限定承認は、相続人全員で行う必要があり、各相続人が個別に選択することはできません。

 

(手続き)
 ・熟慮期間内に相続財産目録をつくる。
 ・相続人全員で家庭裁判所に限定承認の申述をする。
 ・債権者に債権の申し出を催促するなどの手続きを経て、清算手続きを行う。

 

相続放棄とは

相続人が、自らの意思で相続しないことを選択する事です。
 相続による包括承継の効果を、全面的に拒否する意思表示であり、相続放棄をした人は「はじめから相続人にならなかった」とみなされます。

 

 はじめから相続人にならなかったとされますので、相続放棄により、その他の相続人の法定相続分が変更されたり、後順位の相続人が相続人になったりすることがあります(相続放棄の連鎖)。
 また、相続放棄をした人に関しては、代襲相続が発生しなくなります。

 

(手続き)
 ・熟慮期間内に家庭裁判所に申述する。