相続が開始したときに、遺言書がない場合は、被相続人の財産は相続人全員が、暫定的に法定相続分により共同所有している状態(共有)になります。
その共有状態を解消して各相続人に、どの財産をどのように分配するかを具体的に協議して決めることを、「遺産分割」といいます。
民法では、相続財産の行方は、まず第一に被相続人本人に委ねられ(遺言)、遺言の指定がなければ相続人全員の協議(遺産分割協議)に委ねられ、特に取り決めがないときや決まらない(まだ決まっていない)ときは法定相続分を適用する、とされています。
遺産分割の話し合いを「遺産分割協議」といい、遺産分割協議を成立させるには、相続人全員が協議し、全員が合意する必要があります。
遺産分割の話し合いがまとまらないと、各財産の相続手続(不動産名義変更や銀行口座名義変更など)をすることができません。なぜなら、相続財産は相続人全員の共有状態にあるからです。相続人の全員の合意がない限り、手続は進みません。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の「調停」や「審判」の利用を検討することになります。
遺産分割には期限がないため、長期間が経過したとしても遺産分割を行う権利がなくなってしまうようなことはありません。(遺産分割請求権は消滅時効にかからないと表現します。)
※民法改正により、遺産分割協議において、特別受益と寄与分の主張をすることができる期間が、相続開始の時から10年とする内容の期限が設けられることになりました。遺産分割協議自体に期限が設けられたわけではありませんが、有利に協議を進めるためには、実質的に10年以内に行う必要があることになります。
※遺産分割そのものには期限はありませんが、相続税の申告期限(相続税の申告・納付が必要な場合)は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となっていますので注意が必要です。これは税法上の期限であって、遺産分割そのものの期限ではありません。
※「遺産分割」には期限がありませんが、「遺留分の請求」は期限があるので注意が必要です。
遺言がなく、遺産分割をしないでいると、相続財産は、法定相続分の割合で、相続人全員の共有状態のままとなります。
したがって、不動産や預貯金などの相続財産を、特定の相続人に単独で名義変更することはできません。
また、共有の状態のままにしておくと、次のような不都合が生じる場合がありますので、できるだけ早めに遺産分割をしておくことが望ましいです。
(例)
・共有状態の財産を売却などする場合には、相続人全員の同意が必要。
・共有状態の財産を賃貸などする場合には、相続人の過半数の同意が必要。
・財産によっては、維持管理費用等を相続人間でどう清算するかなどの問題が派生していく。
・共有状態のまま、相続人が亡くなった場合、共有財産がさらに相続の対象となり、権利関係と手続が一層複雑化する。